コロカ事業

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八ヶ岳のアップルパイ


 

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紅玉りんごが約6個分!

アップルパイを食べてまず驚くのは、そのサクサクとした食感です。生地でバターを包み、伸ばしては折る作業を何回も繰り返すことで、薄い生地が何層にも重なった焼き上がりになるそう。断面はまるでミルフィーユのように繊細です。

そして、その生地にシナモンとからめたりんごを、山積みになるほどたっぷり重ねていきます。使うのは国産の紅玉りんご。さっぱりとした酸味があり、焼いても食感や香りが楽しめるのが特徴です。直径21cmのホールの場合で、紅玉を5-6個分使用します。一般的なレシピで使うのは2個程度なので、どれだけ多いかが分かります。

「紅玉を新鮮なうちに蜜煮にして、通年で使っています。紅玉は生産量が少ないから、手に入れるのは大変。違う品種のリンゴを使うお店もあるけど、パイにするには甘すぎる。やっぱり紅玉が一番合うんです」

 

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目先の利益より、いい商品を

定番の人気商品とはいえ、三井さんは今でも改良を怠りません。よりコクのあるバターを使ったり、パイ生地を砕いて混ぜることで、りんごを隙間なく焼き上げる製法に変えたりと、さらなるおいしさを追求しています。「長く作っていても、新しい発見がある。『これで完成』ということはないですね」。

焼き立てのアップルパイからは甘い香りが漂い、生地からはりんごがはみでそうなほど! 添加物など余計なものは加えず、何切れでも飽きずに食べられそうな自然な味わいです。しかも、21cmホールで2,100円と価格もリーズナブル。

「原価の安い材料で、どこにでもあるような商品を作っても仕方ないし、高すぎても買わないでしょう。うちのは、紅玉をたくさん使っている割に安いと言われます。目先の利益よりもいい商品を作り続けることのほうが大切なんです」

 

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目標は"老舗の和菓子屋"

暑さもかまわずに、テラス席で一生懸命に話し続ける三井さん。そして、工房とお店を忙しく往復しながらも、冷たいお茶を何度も替えてくださる奥さま。こうした誠実な人柄が、商品やお店の雰囲気にも表れているような気がします。そんな三井さんに目標を尋ねると、なんと"老舗の和菓子屋さん"との答え。

「今は、なんでも目新しいものを求める傾向があるけど、パッと売れて1~2年で消えてしまうことの繰り返し。売れるとすぐに大きな工場にして、全国どこでも買えるようになる。でも、それが商品の寿命を短くしちゃうこともある。和菓子屋には、何百年も続いている地元の老舗がありますよね。そこには昔から変わらない商品がある。僕もしっかり土台を築いて、この先何十年、何百年と残る店や商品を作っていきたいんです」

 

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何十年と続くおいしさ

お店では、巨峰、洋梨、花豆など、季節ごとの果物や地域の特産品を使ったパイも人気です。そのほとんどが県内や八ヶ岳周辺のもの。地元農家さんとの付き合い方にも、三井さんなりの想いがありました。

「山梨にはいい農家さんが多くいますが、直接取引は簡単なことではありません。『今年は大量に買うけど、来年はいらない』では相手も困る。長く付き合って、不作のときには商品を休む覚悟も必要です。どんな商品がお互いのためになるのか、それこそ十年単位で考えないと」

お菓子づくりだけでなく、農家さんとの関係でも、じっくりと時間をかけても残るものを大切にしていることが伝わってきます。それは三井さんの生き方そのもの。きっとこの先も変わらず、おいしいアップルパイを作り続けてくれるに違いありません。

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