業務の効率化とクオリティアップを実現
テクニカルアーティストの役割とは?
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テクノロジー推進本部 技術研究部
TAグループ マネージャー荒井 悠太
コンシューマーゲーム開発会社のプログラマー・TAを経験後、2017年にコロプラ入社。現在は、TAグループのマネージャーを務める。
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テクノロジー推進本部 技術研究部
TAグループ TAチーム雨宮 大士
映像制作会社でリグ、アニメーションをメインにジェネラリストとして制作全般に携わった後、2022年にコロプラに入社。
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テクノロジー推進本部 技術研究部
TAグループ TAチーム庄司 康人
プログラマー、アーティストを経験後、2023年にコロプラに入社。
昨今のゲーム開発では、知識や技術だけでなく、使用するツールの高度化もあり、アーティストやエンジニアの業務がより煩雑化しています。そんな両者の橋渡しの役目を果たすのがTA(テクニカルアーティスト)という職業です。コロプラでは、アーティストやエンジニアがそれぞれの得意領域で業務に集中出来るよう、TAだけの専属グループが存在しています。TAの組織化によって作業の効率化に成功し、複数の開発ラインを正常に動かしています。今回は、コロプラのTA三名に業務やその役割、TAの組織体制について語っていただきました。
- INDEX
- 【1】TAの業務について
- 【2】コロプラのTA組織とその役割について
- 【3】コロプラのTA組織の特徴について
- 【4】コロプラのTA採用について
【1】TAの業務について
まずは皆さんの業務内容を教えてください。
荒井 私は元々コンシューマーゲームを開発する会社でプログラマーをやっていて、グラフィックスやツール関連のプログラム作成をしながら、少しずつアート方面へと活動を移していきました。コロプラに入社後は、TAグループの立ち上げから関わっていて、現在7名のTAメンバーが在籍するTAグループのマネージャーとして、日々のメンバーの働き方や業務のサポートに務めています。
雨宮 私は"リグ"というキャラクターを動かすために必要な仕組みを作っています。もう少し詳しく説明すると、人間的な骨格や関節が入った人形を動かすために必要な動きを、不自然なくスムーズに出来るような仕組みのことです。
庄司 私はTAグループ内で、背景を担当しています。前職のアーティスト経験を活かして、コンテンツのコンセプトや企画意図から、適した開発フロー、ツールの提案や制作を行っています。
TAとはどういったポジションの仕事でしょうか。
荒井 TAの仕事は一言では説明しにくくて(笑)。昨今のゲームグラフィックスの高度化により、ゲーム開発は技術的に難易度が高くなりました。専門性が必要な内容が増え、アーティスト一人だけで絵作りをすることが難しい時代になったと感じています。そこで我々、TAの出番になります。
例えば、雨宮さんが行っているキャラクターを動かす仕組みでいうと、CGの人物データも人間と同じように骨や関節が入っていて、それらを動かしていくのですが、最近のスマホはスペックもかなり高くなっていて、ゲーム内でリアルな人間に近い複雑な骨格を作れるようになりました。そうなると骨や関節の数がどんどん増えていきますから、一つの動作でも違和感なく動かすのが大変なんですね。それを"いい感じに動かせる"仕組みを作っているのが雨宮さんです。
一方、アーティスト歴の長い庄司さんは、アーティスト目線で、「どういった技術」を「どう取り入れれば」現状をより良く出来るかを考えて業務に取り組んでいただいています。同じTAでも人によって得意分野は違うので、それぞれに応じた技術面の向上・効率化を進めています。
データが複雑化して、技術的に高度なスキルが要求される中、アーティストが絵を作りやすくする。あるいは、アーティストとエンジニアの間でやりとりするデータを扱いやすい形に変換したり、データそれぞれを繋げていくということを行っています。
昔は1人で解決出来ていた作業が複雑化したため、それらを簡略化するための技術を構築する、というイメージでしょうか?
荒井 そうですね、そのニュアンスで合っています。最終的に仕上がる絵のクオリティを上げるために、TAがキャラクターや背景、アニメーションなどあちこちに散らばり、技術あるいはその作り方そのものに対してアプローチしていきます。
【2】コロプラのTA組織とその役割について
TAの組織化を行った背景と理由について教えてください。
荒井 組織化された背景としては、自分がコロプラで採用される直前まで遡ります。6年ほど前、コロプラは従業員数も増えてきて、複数のゲーム開発ラインが走り、新作タイトルをいくつも立ち上げ始めていた時期でした。当時エンジニアのマネージャーをやっていた方が、「グラフィックスもだいぶ大変になってきたからTAがいるといいよね」と言ったことがはじまりだと聞いています。当時の私は現場スタッフの一員としてTAの業務を担当しており、転職の際には「TA組織の立ち上げを一から経験させてほしい」と思っていました。それがコロプラの状況とたまたま噛み合ったことで、実際に組織化したというのが背景になります。もちろん、組織化せずに進めるという選択肢もありましたが、当時のコロプラではすでに何百人もの従業員がいて、ゲーム開発ラインも複数走っている。このまま個人がバラバラに動いていたのでは、いずれ苦しくなる時が来ると目に見えていましたから、組織化するという選択肢をとりました。
TAの具体的な業務内容や成果について教えてください。
荒井 比較的、最近の成果としては『白猫GOLF』の開発における工数削減があります。開発当初、かなりの工数がかかっていた部分をいかにクオリティを落とさずに工数を減らせるかを考えました。2.5人で10ヶ月ほどかけて工数を圧縮した結果、開発スタート当初予定されていた工数を約1/3に減らすことに成功しました。
圧縮した業務部分として具体的にどういったものになりますか?
荒井 分かりやすいところだと、ゴルフコースの平面の地形(地面)データですね。表面の凸凹は3Dアーティストが3Dソフトを使用して一つずつ作っています。以前は地道に作っていましたが、今はTAグループのメンバーが開発したツールを使うことでデザイン画に合わせた凸凹が付けやすいポリゴンを自動生成出来るようにしました。もちろん全自動ではありませんが、一から作るよりかは遥かに楽な作業になったと思います。
続いて、雨宮さんはグループ内でどのようなサポートを行っていますか?
雨宮 僕の場合は専門が"リギング"というキャラクターを動かし易くすることなので、CG(見た目)以外の側面からもサポートしています。例えば、動物や人間の骨格はどういう関節構造になっていて、骨の長さはどうなっているのか。この位置に骨を置かないとうまく動きませんといった具合にアドバイスを行います。例えばアニメや漫画に登場するキャラクターのデザインが静止画ではかっこよく見えても、いざ動かしたときにスネが長すぎてしゃがんだり、体育座りが出来ないといったことが起こるのですが、そのような障害を起こさないようにサポートしています。
荒井 他にも出来上がったデータが正しいかどうか、自動でチェック出来るようにもされましたよね。
雨宮 そうですね。荒井さんが最初にお話されていたように、CGの技術自体が上がってくると、昔は一人で出来ていた部分も、やれることの幅が広くなったことで網羅することが難しくなっています。例えばアニメーターであれば、かっこいいモーションやポーズ付けなどは、CGやプラットフォームに関係なく、クリエイティブなセンス・能力として高めなければいけない部分です。
しかし、そこに執着しすぎると、「機能的にCGソフトで何が出来るか」ということに関する知識や探究心が無意識のうちに疎かになっていくことがあります。人には得意不得意がありますから、アート制作方面に能力を伸ばしていくにつれ、CGソフトなどの扱いが分からなくなっていくことが出てくるわけです。そういった事象に対して、TAが「機械的に処理出来る部分はフォローするので、デザイン面に特化してください」と伝えるようにしています。
自動化の具体的な例はありますか?
雨宮 簡単なところだと、PC上でディレクトリ名やファイル名を付ける際に手打ちするのではなく、今作成している条件を元に自動でリストから取得するものや他にも、CGでキャラクターを動かす際、本来は一番元となる腰から動かし、次に連動して様々な部位を動かす必要がありますが、手首を動かしたらその動きに合った全身の動きが自動的に追従するなど、出来るだけ簡単な操作で行えるように自動化し、全体的な効率化を図るような物を作っています。
背景を担当されている庄司さんはいかがでしょうか?
庄司 自分はまだTAになってから期間が短いこともあり、作成したツールなどは少ないのですが、実際にやってみて感じたのが、ある程度のデザイン作成のフロー自体が最適化されている上で的確なツールを作ると、より効率化が図れるんだなと感じました。だからこそ、最初は無駄のないデザインフローに整えてあげること。そのうえで質感の設定やデータの書き出しなどを自動化するツールを作ってサポートする流れにしています。
岩や鉄などの質感を設定する際、自動的にいい感じの物がシェーダーに入るというイメージでしょうか?
庄司 そうですね。だた、アーティストによってはそういうものを望んでない場合もあるので、最終的に求めるものが何かを確認しつつ、提案から始めています。そのうえで、本当に必要であればツールを作っていく形ですね。
荒井 コロプラの場合、「そのプロジェクトにとってどんな表現がふさわしいか?」を決めることはありません。絵面の表現はあくまでプロジェクトのものである、という前提で進めています。
【3】コロプラのTA組織の特徴について
コロプラ独自のTAグループの特徴はありますか?
荒井 最近、外部の方から「コロプラはTAが組織化されていて、うらやましい!」と言われることがあって。そもそもTAが組織化されていること自体が珍しいことのようですね。だからこそ、"TAの組織化" が真っ当に行われていること自体がコロプラの良い特徴なのかもしれません。
庄司 自分はTAを目指して転職先を探していたのですが、やはり企業内にTAの組織があることを重視しました。その理由は、組織化されていることで、アーティストやエンジニア、プランナーに「TAはこういう働き方をする」と理解してもらえているからです。組織化されていないと、「TAって何が出来る人なのか」と疑問に思われることが多く、まずその説明から必要になります。そうすると、プロジェクトに対して働きかけづらいんですよね。
荒井 そこがすごく大事なところです。まずTAの出来ることを理解してもらわないと、私たちの仕事は始まらないんです。それから、組織として確立していると、TAの社内での立ち位置が明確化されるところも大きいです。「◯◯さんが言っていた」ではなく、「TAグループが言っていた」になりますからね。
雨宮 僕もコロプラを選んだ理由はTAグループがあるところでした。前職では、ポジションがなくても同じような作業をやっていて、一人で業務をこなすのはどうしても無理がありました。荒井さんがおっしゃったように、問題点に対して意見を言いたいが、この発言を今、自分の立場でしていいのか悩む瞬間がありました。だからこそ組織化されていることは、強みだと思っています。
また、コロプラのTAグループの特徴としては、グループ内の仕事の取り回しは管理職がやるだけではなく、メンバーが現場で拾ってきて自分で回したり、他にその分野で得意なメンバーがいればその人にお願いする形になることも多くなっています。タスクが予定通りに進行し、全員が無理なくプロジェクトに対してコミットが出来ればOKというスタンスです。だからこそ、ルールの範囲内でメンバー同士の仕事のやり取りが行われ、知識が自動的に共有されていきます。これはコロプラならではかもしれません。
今後どのような組織にしていきたいか、展望を聞かせてください。
荒井 現時点でコロプラという組織に対するTAグループとしては、きっと及第点は取れていると思っています。そのため、今後はどこをどう伸ばせるかを考えるという方針にしています。
少し前まではアート制作に長く携わった経験のある方がグループ内に少なかったのですが、現在、庄司さんたちが加わってくれたおかげでアート制作にも踏み込んでいける強い布陣になりました。すると今度は相対的にエンジニアリングが弱くなってきたので、ソフトウェアを扱う技術力を強化していけば、よりグループとしての総合力が強くなるのかなと。結局、交互に繰り返してバランスを取っていく必要があるんだと思っています。
グラフィックスが常に進化する中、TAグループとしてどのような対応をしていきますか?
荒井 常に新しい技術をキャッチアップしていくことですね。スマホゲームでもコンシューマーゲームでも、最新作の絵がどうやって作られているのかを説明するには、理解し、嚙み砕いて解釈するための技術的な素養が必要になります。
一方で、アート制作に対する理解も深めていく必要があります。例えばオープンワールドのゲームを作る際は、各種データを大量に作る必要がありますが、ただ量産すればいいわけではありません。だからこそ庄司さんがやっているように、どこを自動化して、どこを手作業にすべきかを判断する必要があります。この判断を行うにあたっては、アート制作それ自体に対する理解の深さが結果を左右します。
【4】コロプラのTA採用について
TAグループにはどういった経歴や技術のある方に来てほしいですか。
雨宮 経歴に関して言えば正直あまり気にしてません。本当にみんなバラバラなんですよ。今はコンシューマーゲーム出身の人、モバイルゲーム出身の人、デザインスタジオの人、映像スタジオの人、みたいな感じなので、経歴はそこまで重視していないです。もちろん具体的にどんな仕事をしてたのか見ています。
荒井 そうですね、様々な経歴の方が活躍しています。技術に関しては、どの分野でもいいから「自分、これ得意です!」と言える人が欲しいですね。そこは自己評価で構いません。それを自らアピール出来る主体性が欲しいんです。自分と異なる得意分野を持っている人たちの集団なので、自分なりの動き方が出来る人の方が溶け込みやすいと思います。もちろん年齢も関係なく、若手の方でも「ここはまだ出来なくても、これは挑戦したいです!」と胸を張って言える方は、ぜひ来てくださると嬉しいです。
庄司 自分の場合で言うと、いくつかのプロジェクトを経験していくうちにアーティスト、プログラマー、プランナーとそれぞれ同じものを作っているのに、本当に無駄な作業が多いなと思ったことがTAを目指すきっかけでした。たまたま自身でプログラムを作れたので、そこから精査をし、どんどん効率化していくことが出来ました。
アーティストからTAを目指す方は、最終的な目的に対して、最短ルートで良い物を作りたいというところにモチベーションを持てる方なんじゃないかと思っています。ぜひ、そういった思いがある方はTAを目指してみてほしいですね。
最後に求職者へメッセージをお願いします。
雨宮 TAの業務を考えると、あまり一つのことに固執せず、様々な物に対して柔軟に受けられる方がいいと思います。「TAだからこれをする、しなければいけない」ということはないので、やりたいことに対して行動出来る方が良いのかなと思います。
庄司 自分は未経験でそれなりに年齢もいっていたので、不安なところが多かったです。もし何かに悩んでも、結局「一人で解決しないといけないんじゃないか」と、ある程度の覚悟をしたうえでコロプラに転職をしました。ですが、実際にはそういったことはなく、常にグループ内でサポートし合おうという空気があり、安心しました。相談したことに対しても必ずフィードバックをいただけます。そういう意味でも、なにか新しいことにチャレンジしようと思っている方には、とてもいい環境だと思っています。仕事の渡し合いは、人と人のサポートのし合いでもありますから。
荒井 「自分はこれが出来ます」あるいはやりたいという方は、ぜひそれを私たちに伝えてください。それに合った仕事が出来る環境だと思います。もちろん、言わないでも仕事は割り振られますが、それよりも自分で手を挙げた仕事に取り組む方が楽しいと思うんですよね。
TAグループは、おそらくコロプラの中でもその趣きが強いグループです。目標や、やりたいことが途中で変わってもいいんです。とにかく「自分はこれが出来る!」「これがやりたい!」と言える方、ぜひ一緒に働きましょう。