未経験や新卒でもチャンスがある! ゲームをより魅力的にするエフェクトデザイナーの仕事
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『白猫プロジェクト』
デザインチーム マネージャーマル
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『白猫プロジェクト』
エフェクトチーム リーダーヤマ
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『白猫テニス』エフェクトデザイナー
スガ
「エフェクト」といえば、アクションシーンの華やかな演出を思い浮かべる人も多いはず。特に『白猫プロジェクト』や『白猫テニス』では、キャラクターの特徴や性能にも関わる重要な表現として、もっとも目を引くパートでもあります。技を出したときの演出によってキャラクターの魅力を際立たせ、さらにはゲームの世界観に臨場感やリアリティーを醸しだすなど、エフェクトはいろんな表現ができて、本当に奥が深い!
今回はそんなエフェクト制作の舞台裏を探るべく、『白猫プロジェクト』のデザインチームでマネージャーを務めるマルさんと、同タイトルのエフェクトを担当するヤマさん、そして『白猫テニス』のエフェクトを手がけるスガさんの3人に、具体的な業務内容からエフェクトデザイナーの醍醐味まで、たっぷり語ってもらいました!
「エフェクト」はアクションを盛り上げ
キャラクターの魅力をより際立たせるモノ
ゲームの「エフェクト」というと、視覚効果によってゲームを演出するものだと思うのですが、みなさんは「エフェクトデザイナー」の役割をどんなふうに考えていますか?
スガ キャラクターやアクションなど、とにかくそのものを際立たせる仕事ですよね。お化粧してあげるような役割だと思います。
ヤマ 絵を描く人は0から1を生み出すわけですけど、私たちは50のものを100や200まで持っていくような仕事だと思ってます。むしろ、そこに魅力を感じていますね。
マル 増幅させている感じはありますね。エフェクトがなくてもゲームは遊べますけど、エフェクトが付くことでアクションに爽快感が生まれたり、リズムができたりします。
スガ 『白猫テニス』の場合、キャラクターが個々に「スーパーショット」という必殺技を持っているので、それぞれのキャラに合わせてエフェクトを工夫していますね。キャラの性能がスーパーショットで決まってくるので。
みなさん、どういったきっかけで「エフェクトデザイナー」の道に進まれたんですか。
スガ 僕は映像系の専門学校を卒業してから、テレビ制作会社を経てゲーム会社に入ったんですけど、ゲーム会社に遊技機用の映像制作の依頼が増えた時期があったんです。遊技機でリーチがかかるとCG映像が流れますよね。とにかく派手なエフェクトを作って盛り上げるという仕事でした。それから本来やりたかったゲームの仕事がしたくて、コロプラにエフェクトデザイナーとして入社しました。
ヤマ 私も前職はコンシューマーゲームの会社だったんですけど、スガさんと同じように途中から遊技機用の映像を作っていましたね。ゲーム制作のときはモデルや背景、モーションなど、ひと通り作っていたんですけど、どれもそれほど得意というわけでもなかった。最後に遊技機用のエフェクトを任されて、ようやくハマったという感じでしたね(笑)。
マル 私は映像系の専門学校を卒業後、映像制作会社に入ってテレビ番組やCM、映画のCG映像を作っていました。テレビや映画の仕事は分業化が進んでいるので、モデルにモーションを付けてもらってから、私がライティングやレンダリングをして最終的に納品するという仕事が多かったです。それからコロプラに入社して、前職の経験から『白猫プロジェクト』のエフェクトデザイナーを任されて、『クイズRPG魔法使いと黒猫のウィズ』の協力バトルの演出も担当しました。
やはり専門学校などで、ある程度、技術を学んでいることがベースになってくるのでしょうか。
ヤマ 必ずしもそうではないと思います。私の場合、学生時代は染色を専攻していました。だけど、これがぜんぜん合わなくて......(苦笑)。だったらまったく逆の方向に進もうと思ってゲーム会社に入ったんです。だから、会社に入ってから技術を身につけていったんですね。
マル むしろ、たとえ未経験でも「こんなゲームが作りたい!」という熱意があるほうが大事だと思います。いろんなゲームで遊んでインプットしてないと、やっぱりいいゲームは作れない。たとえば「あのRPGシリーズのあんなエフェクトを自分も作ってみたい」という目標がある人のほうが伸びると思います。
映像用の「エフェクト」とゲームの「エフェクト」では、どんなところに違いを感じましたか?
スガ 遊技機の映像はそれほどデータ容量を気にしなくてもよかったんですけど、ゲームは容量を気にしなくちゃいけない。テクスチャーのサイズの桁がぜんぜん違うんです(笑)。
ヤマ たしかに前職ではほぼ無制限で作っていましたね。遊技機の映像では8000pixくらいのテクスチャーをばんばん貼っていたんですけど、スマホゲームでは512pixもあれば贅沢みたいな(笑)。最初はちょっと戸惑いましたね。
マル 私も入社当時は容量を重く作りすぎてエフェクトがバーストしたことがありましたね。エンジニアがうまく処理してくれて助かったんですけど、それ以来、こういう作り方をしたらデータが重くなるとか、エフェクトがプレイを阻害してはいけないとか、ひとつひとつ覚えていった感じです。今思うと、最初にそういう経験をしておいてよかったと思いますね。
業界的にも「エフェクトデザイナー」が求められている
だからこそ、チャンスも大きい
みなさん最初からエフェクトを専門にしていたわけではないようですが、どんなふうに専門化していくのでしょうか?
マル プロジェクトの規模にもよりますが、『白猫プロジェクト』くらいの規模になると、モデル、エフェクト、モーションそれぞれ分業化したほうが制作スピードも早いし、クオリティーも高くなるので、なるべくスペシャリストを育成するようにしていますね。
ヤマ 優秀な人はモーションもエフェクトも両方できると思いますが、私はモーションが苦手なので、エフェクト専門で作っているほうがやりやすいです。
マル エフェクトはコロプラでも力を入れていきたい分野なので(同じくモーションもですが......)、ポートフォリオにエフェクトの要素が入った作品があれば、面接の際にエフェクトに興味があるかをお聞きしますね。実は業界的にも「エフェクトデザイナーがもっと必要なのでは」と言われていて、ゲームのエフェクトが未経験でも、興味があって向いていそうな方なら可能性はあります。特に新卒の方は「キャラのモデルを作りたい」という人が多くて、入社後に「初めてエフェクトを知った」というケースが多いんです。それからエフェクトに興味を持つようになって希望を出す人もいます。
エフェクトデザイナーの分野で活躍する人を増やしていきたいということは、ある種のチャンスと捉えることもできますよね。未経験や新卒でも可能性があるわけで。
ヤマ 私も最初はそんな職種があるなんて知らなかったですからね(笑)。やっぱりクリエイター志望の人は、0から1を作りたいというタイプの人が多くて、最初からエフェクトに注目する人は少ないんですよね。
先ほどデータ容量の違いの話が出ましたけど、映像とゲームで「表現」の違いはありますか。
マル かなり違いますよね。たとえば、爆破シーンのエフェクトを作るにしても、映像の場合は、実際の映像に違和感がないように表現することが大事で、そうするとリアルな煙の動きをパソコンでシミュレーションすればいいわけです。だけどゲームの場合は、ゲームの世界にとけ込んでいることが大事なので、単にリアルにすればいいというものでもない。自分の頭の中で煙の動きを想像して、シミュレーションするみたいな感じなんですよね。
ヤマ ある意味、ウソをついてもいいわけです。
なるほど。では、表現の技術やセンスはどのように高めていくものなんでしょうか。
マル トライ&エラーですよね。実際にゲームの中に入れてみると、「思ったより気持ちよくないな」ということが多々あって、じゃあもう少しここを大きくしてみようとか、ちょっと色を変えてみようとか......そういうことを繰り返して完成に近づけていく感じですね。
ヤマ ビームひとつとっても、ピンクもあればグリーンもあるし、1本の太いビームもあれば3本のビームを同時発射するものとか、いろんな種類がありますよね。そういう意味ではいろんなゲームをやり込んでいるといいと思いますね。
マルさんはメンバーの「エフェクト」をチェックする際、どういったところを重視して見ていますか?
マル 一時停止したときのきれいさを重視していますね。攻撃や技のエフェクトって一瞬だったりするんですけど、コマで見たときに汚いと、やっぱり全体を通して見たときも汚く見えてしまうんです。逆にコマが整理されていてきれいだと、通して見たときもきれいです。エフェクトに不慣れな人は、とりあえずいっぱい詰め込もうとしがちなんですけど、一時停止して見ると、いろんな色が混ざって濁って見えたりする。だけど、シンプルにしても同じようにかっこいいエフェクトは作れるんですよね。上手い人ほどシンプルだったりします。
ヤマ 特にゲームはキャプチャーが機能紹介などの際に使われたりもするので、どの場面でもエフェクトが成り立つように作ることが大事になってきますね。
スガ 360度どこから見ても、どこを切り取ってもきれいなのが理想ですよね。
「エフェクト」の醍醐味は「自由」であること
クリエイターの個性やセンスが発揮できる
エフェクトデザイナーの仕事の面白さや醍醐味はどんなところにあると思いますか。
マル 自由ですかね(笑)。自分に裁量がある。
スガ まさにそれが一番大きいですね。特にコロプラは、各クリエイターが作りたいものに対して寛容なところがあるので、のびのび仕事をさせてもらっていますね。
マル 映像の場合は、監督やディレクター、あるいは広告代理店のクライアントの要望に合わせて作るんですよね。そうすると、自分は絶対にこっちのほうがいいと思っても、そのとおりに作れないということが多々ある。だけどコロプラの場合は各メンバーが独自に作っているので、クオリティーが水準に達していれば自分のイメージで作ることができるんです。
ヤマ シナリオやキャラ設定に合っていれば、けっこう自由にできますよね。
マル だから「これはヤマさんが作ったエフェクトだな」ってすぐにわかったりするんですよね(笑)。
スガ 色の雰囲気だけでもわかるときがありますよね、誰が作ったか(笑)。
クリエイターのこだわりやセンスが発揮しやすいわけですね。それぞれどんなエフェクトが得意なんでしょう?
ヤマ 私は魔法陣を使用した王道なエフェクトが得意で、作っていても楽しいです。中学生が憧れるようなかっこいいエフェクト(笑)。
スガ 僕は好きなものや得意なことをあえて限定しないようにしていますね。ずっと同じパターンで作っていると、どうしても飽きることがあるんです。たとえば悪魔系のエフェクトばかり作っていると、やっと天使系エフェクト来た! みたいな(笑)。いろんな種類をつまみ食いするのが好きですね。
マル 実は、私はちょっとゆるいエフェクトが好きなんです(笑)。
ヤマ 初めてマルさんが作ったエフェクトを見たとき、ビックリした記憶があるんですよ。『白猫プロジェクト』でふなっしーとコラボしたときのエフェクトとか、宇宙飛行士がポワ~ンと飛んでくるエフェクトとか、超面白くて(笑)。
どんなエフェクトが「上手いな」って思いますか?
スガ 起承転結がしっかり構成されているものでしょうか。
ヤマ 徐々にパワーを溜めて「チュドーン!」みたいな流れで表現しているものですよね。
スガ 一連の流れで、気持ちよさが生まれるんですよね。
マル そうした流れで考えられる人は、やっぱり上手いですよね。最初にフラッシュがあって、0.05秒のタイミングでリングが広がるといった微妙な差でかなり印象が違ってくるものなんです。コマ送りをしてみるとよくわかる。
スガ 作り手の体感が大事になってきますね。
ほかにも気をつけているポイントなどはありますか。
ヤマ 作り手としては派手に目立たせたくなるんですけど、やっぱりエフェクトは補助的に演出するものですので、たとえば煙によってモンスターが見えなくなってしまうといったエフェクトは避けるようにしていますね。
スガ それは大事なことですよね。特に『白猫テニス』は対人戦の要素が強いので、自分がスーパーショットを放ったのに、エフェクトでボールが見えなくなって負けちゃった......みたいなことになると問題です。
エフェクトデザイナーの仕事をやっていくことで、将来的にどんな技術や経験が培われていくと思いますか?
マル エフェクトは仕上げの段階になってくるので、エンジニアとやりとりをする機会が多いんですね。それもあってUnityがベースになってきます。他のデザイナーは制作工程の8割がAutodesk Mayaで残り2割がUnityという感じなんですけど、エフェクトデザイナーは7~8割がUnityで、そのほかにAutodesk MayaとAdobe Photoshopも使うという感じです。だからUnityには詳しくなる。最終工程に関わることでゲーム全体が見えるので、ゲーム作りの知識も身につくと思いますね。
スガ エンジニアと相談しながらエフェクトを実装させていくので、ゲームを作っている実感はすごくありますね。実際のプレイを見て、もうちょっとエフェクトを大きくしてみようとか、ここにギミックを仕掛けてみようとか、いろいろ試しながら作っていけるんです。
ヤマ マルさんやスガさんが言っているように、エンジニアをはじめ社内のいろいろな人とものづくりをしていきますので、デザインの技術に限らず、高度なコミュニケーション能力も自然と身についていくと思います。「面白いものを作りたい」という同じ想いがある専門家が集まっているので、毎日が刺激的ですね。
本日はありがとうございました!