業界最先端でVRゲームを制作する、コロプラVRチームのマネージャー
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エンジニア
小林傑
Kuma the Bear 開発本部
2012年新卒入社。入社後『ほしの島のにゃんこ』を立ち上げ、現在はVRチームのマネージャーとして活躍中。
子供のころからプロのサッカー選手になりたかったという小林さん。しかし高校3年生の夏にケガをしたことから、サッカー選手になる夢は断念して進学を決意。大学でプログラミングの勉強をすることは特になく、卒業後は半年間の留学やアメリカ遊学などを経て、コロプラに新卒で入社。現在はVRチームのマネージャーとして活躍していますが、エンジニアになった理由は「手に職をつけたかったから(笑)」と話します。でもインタビューを進めるうちに、VRに対する熱い思いが溢れ出てきました。
サッカー選手になる夢が断たれたことから、エンジニアへ
小さいころは、どんな子供でしたか?
サッカーしかやっていませんでした。家にいるときはゲームをしていましたが、ほかのコロプラ社員に比べたらそこまでゲームをしていたわけではないと思います。プロのサッカー選手になりたかったので、高校3年生のときにJFLや実業団などの入団テストを受けました。でも入団テストを受けている夏にケガをしてしまい、サッカーは断念したんです。そこから大学に行くことを決めて進学しました。
サッカー少年だった小林さんが、エンジニアになろうと思ったきっかけはどんなものだったんですか?
手に職をつけたかったんですよ(笑)。コーディングできれば食いっぱぐれないかなと思って。
その理由も意外です。「手に職を」という思いは、いつごろから生まれたんですか?
小さいころからです。親が仕事で海外へ行っていることが多かったので洗濯も食事の支度も自分でやっていたんですが、銀行に振り込まれたお金を自分でおろして使うこともありましたから「お金が振り込まれなくなったらどうしよう」という危機感がずっとありました。だから「お金ってどうやったら稼げるんだろう」と考えるようになったんですね。
なるほど。それで、プログラミングの勉強は大学でしたんですか?
実は全然していないんです。本も読んでいませんし、自分でプログラミングをするようなこともありませんでした。ただ、就職活動をするときに「どんな仕事をすれば食いっぱぐれないか」と考えたときに、「エンジニアになれば大丈夫かな」と思ったんです。
自主留年をして留学後、就職を決意してコロプラへ
大学4年生になったころ、就職活動を始めたという流れでしょうか。
いいえ。大学4年生だった当時、周りの友人たちは就職が決まっていたなか、私はやりたいことが決まっていなかったので一切就職活動をしていませんでした。それで自主留年をして奨学金をもらって半期だけ留年し、そのあとアメリカへ行って何ヵ月か過ごしていました。でもある日突然、母が倒れたという連絡を受けて帰国しました。その時、罪悪感が芽生えたんです。やりたいことがないために、人生の夏休みを延ばそうと考えていたことに。ですので帰国した秋から就職活動を開始しました。
お母さんは大丈夫だったんですか?
たんなる貧血で倒れただけだったんですよ(笑)。電話をもらったその日のうちに飛行機で帰国したんですが。
でも、就職するという気持ちは変わらなかったんですね。
そうですね。ただ、その時点ではほとんどの企業で採用試験が終わっていました。そこで新聞の株式欄を見て企業名を書き出し、片っ端から電話をしたんです。200社ぐらいはかけましたね。「こういう理由で就職活動できなかったのですが、面接していただけませんか」と。ただコロプラは、就職情報サイトで見て応募しました。
プログラミングのできないエンジニアとして入社
2012年は、コロプラが初めて新卒採用をした年なんですよね。受かった理由はどんなものだったと思いますか?
当時面接官だった人によると、「目がキラキラしていた」そうです(笑)。面接時に「コロプラで働くにあたって大学でどんな勉強をしてきましたか?」と質問されて、私以外の人は「Unityを触っています」とか「プログラミングをしています」とか言っていてスゴイなと思ったんですが......私は大学では一切やっていなかったので「スキーをしていました」と、とりあえず大きな声で言ってみたんです。それが案外、ウケが良かったらしくて......今なら受からないと思いますが(笑)。
ゲーム会社に就職しようと思ったのはなぜですか?
おこがましいですが、楽しいことをしながら勉強して覚えていくほうが吸収できるのではないかと思ったんです。それで最初に思い浮かんだのがゲームを作ることだったんですね。
入社2年目で『ほしの島のにゃんこ』のPMに
入社して、プログラミングはできるようになったんですか?
ある程度の小さいゲーム程度なら、コーディングはできるようになりました。いまも家ではVRゲームなどを個人的に作っています。ただ、商業としてコーディングをするとなると何年も先を見越してやらなければならないので、そこまでのレベルではないですね。
すぐ身につきましたか?
当時は結構勉強しましたね。会社でも教えてもらっていましたし、家に帰ってからも自主的にコーディングする時間がかなりありました。
入社2年目で『ほしの島のにゃんこ』のPM(プロジェクトマネージャー)として活躍しましたよね。どんなふうに企画を考えていったんですか。
ある程度コンセプトがあり、社長から「箱庭のようなものがいい」と言われていました。私たちが決めたのはそれ以外のところで、キャラクターを猫にするとか、猫たちが島にいる理由などでした。あのゲームの世界観を作り上げるために、当時チームメンバーだった同期とはずいぶん話し合いをしましたね。
同期がいて良かったことはありますか?
よく覚えているのが、1年目の10月に社内のアワードのようなものに同期がノミネートされていたときのことです。あれは闘争心を掻き立てられましたね。そういう意味では良きライバルであり、切磋琢磨していける仲間がいて良かったと思います。
やはり同期の活躍は気になりますか?
もちろん意識はしていますが、当時私が真の意味で気にしていたのは、同じ部署の上司でした。「なんで自分とこんなにレベルが違うんだろう。どうしてあんなに上手く指示が出せるんだろう」と思っていたので、ライバルはその先輩だと勝手に思っていました。役職が2つ3つ違う人と比べて、自分に何が足りないのかということを認識し、そこで勝負するほうがいいと個人的には思います。もちろん、上司に対して1度も「勝った」なんて思ったことはありませんが......目標を高く、こういうふうになりたいと思うことは大切だと思います。
技術者として本当に刺激的なVR制作の現場
『ほしの島のにゃんこ』が成功して、いまはVRチームのマネージャーという立場なんですよね。
2015年1月にチームを立ち上げたんですが、社長から「よろしく頼む」と言われました。
社長が「これから絶対来る」と考えているVRの部署を任されたことについてはどんなふうに思いましたか。
当時はVRに関する知識が一切なかったので、半信半疑でしたね。立ち上げから3ヵ月後ぐらいに社長に呼ばれて、「VRは来ると思う?」と聞かれて「いや、わからないです」と答えたことを覚えています。ただ、それからVRに携わることが増え、いろいろな体験をしたことにより、いまでは間違いなくVRが次のプラットフォームになると確信しています。3〜5年後くらいに、VR業界がどんなふうになっているのか。こんなに環境が整ったところで開発に深く関わって見ていけるのは、技術者として本当に刺激的で、有難いことだと思っています。
いままで作ってきたゲームと、VRゲームの制作で違う点などはありますか。
いくつかあると思いますが、たとえばカメラワークは違いますね。これまでのゲームでは、開発側が見せたい視点の画像だけ作っていれば良かったのですが、VRゲームではプレイヤー自身がVRのカメラを操作しますので、あらゆる視点からゲームをプレイされることになります。言い換えれば、どんな視点からプレイされても問題のないようにゲームを作らないといけません。これについてはゲーム制作の経験やノウハウがある方ほど「VRは難しい」と感じる傾向にあるように思います。私は逆に、そこまで経験がない状態でVRの開発に取り掛かりましたので、そういう意味ではやりやすいのかもしれません。
ゲーム制作の経験やノウハウがある方ほど「VRは難しい」と感じる。奥が深いですね。
そして言うまでもなく、その経験やノウハウがゲーム制作には重要なわけです。ちなみにコロプラのVRチームのメンバーはコンシューマ系のゲーム制作会社で長年活躍してきた人が多いのですが、みんなその難しさを「楽しい」と感じているようです。VRゲームを作るために転職してきた人が多いので、難しければ難しいほど挑みがいがある、というか。
なるほど。VRコンテンツを作る上で気をつけていることなどはありますか?
まず酔わないコンテンツを作ることが最重要だと思っています。VRは本当に大きな可能性を秘めているのに、初めてVRゲームをプレイする方が酔ってしまった場合、「こんなに気持ち悪くなるのか」となってしまったらその方に申し訳ないですし、ひいては業界発展にも良くない影響を与えてしまうと思うからです。ノウハウが溜まっていくことで、VRに慣れていない方でも酔わないカメラワークが提供できるようになれば、人類が夢に描いてきたようなコンテンツをどんどん出していけるようになると思います。
これから先、VRはどんなふうに発展していくと思いますか。
いろいろな展開があると思いますが、個人的に楽しみなのが「VRネイティブ」のクリエイターたちの活躍なんです。新卒社員がVRチームに配属されると、VRネイティブな人(VRゲームを作るのが当たり前の人)になるわけですよね。そういう人たちが考えるゲームにすごく興味があります。彼らが1年、2年経ったら、どんなVRゲームのアイデアを出すのか、楽しみなんです。
たしかに、なんだか面白いことが起こりそうですね。いずれVRネイティブな方にも取材させていただきたいと思います。